そういえば話して無かったかな。


実は先日、輝に手紙が届いた


"西条 紅愛さんへ


突然のお手紙すみません。


僕達は元舞龍幹部の、玲音、仁哉、柊と申します。


僕達3人にはずっと探している人がいます。


その名前は、西条 紅愛


今は亡き大切な仲間の妹です。


その子は数年前、まだ子供で、何も出来なかった自分達が傷つけたがために


記憶を無くし姿を消しました


どんなに探しても何の手がかりも得られず無情にも時間だけが過ぎ、今に至ります


そんな時、その話を族関係の友人に話すと、とある情報を聞きました


輝に新しい姫ができていた、と。


その姫の特徴がそっくりだ、と。


これに賭けるしかないと思った僕達はいてもたってもいられずペンをとりました。


何の話かサッパリわからなければ捨てても構いません


もし…アナタが僕達の探している人で


記憶が戻って、僕達の事をまだ覚えていてくれているのなら


1度、会って話をさせて頂けないでしょうか?


3日後の19時に舞龍の倉庫跡地でまっています。"



私の過去はみんな知っていたから、その手紙はすぐに回されてきた。



忘れてたわけじゃない、


でも記憶として


辛い過去として


収めてしまった今は


その鍵を開けるのが、怖い


嫌いでもない、憎んでもない


行きたい、行った方がいい


わかってるけど、それでも行くのを躊躇っていた。


そんな時


「紅愛、行ってこい」


私の背中を押したのは翔聖だった


「もう、過去にしよう。


俺も…親と会ってくる」


"過去にしよう"


それは、過去と今を断ち切るということ。


忘れることの無い過去の出来事を、引きずらないということ


「翔聖…。」


「勇気なら俺がやる」


「…っふは!何それ!」


「………」


翔聖が俺様キャラになってる


くつくつ笑う私に、ギロッと睨みをきかせる翔聖


「…はぁー。うん、翔聖が居てくれるなら行ってくる」


「あぁ」


当たり前だろ、とでも言いたげな笑みに私も再び口元を緩めた


「…ありがとう」


素直に口から言葉がこぼれる。


無意識だったから自分でもハッとしたけど、訂正はしない。本当の気持ちだし


翔聖も少し目を見開いてたけど、ふわっと笑って私の髪を撫でた




__と、後半はかなり関係ない事だったけど…私は3人に会ってきた



…あの時から数年経った今は土地開発が進み、周りにはたくさんの家が建っていた。


それでも道は変わってなくて、たどり着けて一安心


舞龍の倉庫跡地には小さなカフェができていた。


白塗りの外装に


木を基調とした暖かみのある、ゆったりとした内装


オシャレでとっても可愛らしい


時の流れを感じながら、私はふっと息を吐き出した











中に入って、彼らは直ぐに見つかった


あの頃と同じ。


決して厳つくないのに人とはどこか違うオーラ


ボックス席に座る、3人だけがハッキリと見えたから


ついでに、女性の視線がハンパない


「お1人様ですか?」


その時、カフェの店員さんに声をかけられてハッと我に返った


「あ、いえ…待ち合わせしていて」


「承知しました、どうぞ」


雰囲気のいい柔らかい笑顔に迎えられ、私は1歩踏み出した