夢を見る事は嫌いじゃない。
夢の中の出来事は、夢でしかないはずだから。
『死の夢』なんて信じたくなく、明葉はそう思っていた。
程無くして睡魔に襲われ、眠りへと落ちてゆく。

そして次に目覚めた時。

目を開けると、明葉は制服姿で学校の廊下にいた。
「え…?」
明葉は呆然とした。自分は眠りについたはず…。
姫桜高校ではない。まるで何年か放置されたような、荒れ果てた学校の廊下。
面する教室の窓は割れ、ガラスが散乱している。
「………」
それなら、ココは又夢の中?
戸惑いを覚えながら、明葉は教室のひとつに入った。
外を確かめようと窓に近寄るが、何の景色も見られない。
只、塗り潰すよう暗闇が広がっている‐。
同じ不可解な世界でも今朝の夢とは全く様子が違った。
「そんな…。何なの?」
明葉は、改めて恐怖を感じた。
校内に漂う嫌な空気を感じられる事からして、今回の夢にも感覚があるらしい。

「キャアアアッ!」

その時、突然悲鳴が響いた。
「………!?」
明葉は硬直する。それは、確かに聞き慣れた声…。
恐怖に背中を追われるように、明葉は再び廊下に出た。