日野明葉は都内姫桜高校に通う一年生で、新聞部に所属している。
今日も普段と変わらぬ朝。
学校へ行く道の途中、夢の出来事を思い返す‐。
「………」
「よう。おはよう明葉」
と、三年生の坂本武司が、明るい声をかけて来た。
「あ、おはようございます」
明葉が笑い返す。
坂本は新聞部の部長を務めているが、一浪しているらしく、本来は大学生の年齢だ。
明葉と坂本は、雑談まじりに学校までを歩いた。
「じゃあ、俺は行くから。今日も部活よろしく頼むよ」
「はい」
下駄箱で靴を履き替え、明葉と坂本は各々の教室へ向かった。

教室の扉を開けると、いつもの賑やかな声が溢れてくる。
とりあえず自分の席に座り、明葉は軽く背伸びをした。
「ふう…」
「おはよう。どうかしたの？」
同級生の雪村美由が、明葉の様子を眺めている。
「おはよう…。今朝、何か変な夢見ちゃって」
「日野さんも？」
美由の言葉に、驚く明葉。
「え、美由も？」
「うん。朝から疲れちゃった」
そう言って、美由は笑った。
言われてみれば、今日の美由は目元が重く見える。
そして、始業チャイムが話を遮るように鳴り響いた‐。