「…えええええ!?」
そして、沈黙を破ったのは明葉の叫びであった。
「うるさい…」
少年が明葉を振り返る。
「う、嘘でしょ!? あなたの夢と繋がってるって…どうして」
「何でかは知らない。言ったろ、お前が俺の夢に入って来たって」
「………あ」
明葉の中で、あの日の場面が思い返される。
夢の中に広がる、無数の鎖と金網。
少年の言葉。
明葉は、屋上の床に座り込んだ。
「じゃあ、私…コレからも悪夢を見るの?」
「俺が夢魔を狩る時はな。次は、最初から助けてやるよ」
少年は、面白そうに笑っていた。
明葉は、改めて彼を眺めた。
歳は同じくらいに感じる。
夢魔と名乗りながら人間の少年と変わらぬ表情の彼は、何者か…。
「名前は?」
不意に、少年が明葉に言う。
「…え?」
「最初会った時から聞いてるだろ」
そう明葉と少年は、一度も名前を交わしていなかった。
「………日野…明葉。あなたは?」
明葉が少年を見上げて言う。
「黒木新夜」
そう言って、少年…黒木新夜は、明葉に手を差し伸べた。

「ようこそ、悪夢へ」

「………」

一瞬驚いた表情を浮かべてから、明葉は怖々とその手をとった‐。