「ソイツらは悪夢の兵隊さ。言っておくが、鏡が本体なんて落ちは無いぜ」
そう言って、少年が美由の正面に立つ。
制服から覗く彼の手首、腕が、黒く鋭く変化していった。
「………やめて…」
明葉が言う。
「ココからは、俺の仕事だ」
少年が言う。

そして次の瞬間、彼は美由の胸にドスリと腕を突き刺した‐。

閉じていた美由の瞼が見開かれる。
明葉の中で、全てが凍りつくような感覚が流れた。
「心臓でも取り出すと思ったのか?」
「………え?」
少年の言葉が、明葉を我に返らす。
少年が腕を引く。美由の中から、何かを引っ張り出す。
美由の意識は定かなのか…血は流れておらず、苦痛の様子は無い。
熱に浮くような表情であった。
「悪夢を見せてるのは俺じゃない」
引き出された少年の腕には、美由から取り出した、黒く蠢く物体が掴まれていた。
「コレが、悪夢の本体…お友達の中に居た夢魔だ。人の心を蝕み、最後は宿主を覚めない眠りへ導く」
少年が言う。
「じ、じゃあ…。死の夢って…」
「勿論、コイツらの仕業さ」
明葉の問いを少年が返す。
死の夢と夢魔‐。
コレが、その繋がりの形であった。