美由は、朝から怠さが抜けぬ体で自分の部屋に居た。
眠ると悪夢を見そうで、ベッドの中でTVを眺めるにとどまっている。
家は、弁当屋を営んでいる。店を兼ねての美由の家は賑やかだ。
「おい美由、具合は?」
と、帽子にエプロン…店の仕事着姿の父親が彼女の部屋に来た。
「ん…同じ。どうしたの?」
美由が言う。
「学校の友達が来てるぜ」
「えっ?」
父親に言われて美由は外に出た。
店先で、学校帰りの明葉が美由を待っていた。
「来ちゃった」
美由の姿を認めて、明葉が笑う。
「日野さん…。ありがとう」
「ううん。体、大丈夫?」
「大丈夫だよ。怠いけど…病院に行くほどじゃないし」
美由が元気の無い表情で言う。
「そう…」
「けど、ちょっとびっくり。私、昨日の夢で日野さんに会ったよ」
「………夢?」
「又、悪い夢見ちゃったけど…。夢の中で助けてくれて嬉しかった」
そう言って、美由は笑った。
「又…助けるから」
明葉が小さく言う。
「?」
声は、美由に届いたであろうか。
「ううん、何でも。じゃあ明日、又学校で」
「…日野さん‐…」
美由は、去ってゆく明葉の背中を不思議そうに見送っていた。