それは、不思議な空間だった。

頭上には無数の鎖が下がっている。
足下に広がるのは金網の床。
果て無く続くような、その上を私は歩いている。
視界の先に何があるのか、確認する事は出来ない。上も下も、辺り一面が白い霧で覆われている。
私は只、夢遊病者のように足を進めていた。

…夢遊病。コレは、夢?

現実の景色とは思えない。けど、金網を踏む冷めた感覚は、確かに伝わってくる。
霧の中を、どれくらい進んだろう。
「………?」
目の前に、扉が現れた。
近寄って見る。霧に映える、真っ黒の扉。
…どうしよう。
後ろを振り向く。歩いてきた痕跡もわからない、延々と続く金網。遠く霧の中へ続くその景色に、終わりを見る事は出来ない。
私は、扉に向き直った。ゆっくりと手を伸ばす。
それならコノ扉の先に、何があるのだろう。よく見ると、扉の隙間からは霧が流れ出ている。
私は、扉を押した。
扉は抵抗無く開き、思わず私は踏み出していた。
一層濃い霧が溢れてくる。体を雲の中に突っ込んだようで、私は目を閉じた。

一面、白。

目を開けると、金網の上より不思議な光景が飛び込んできた。