あいつ、絶対気づいている。

俺、長谷部颯太はそいつにバレない様にチラリと車両の一番隅に座る女子に目を向けた。

笹原舞香。

大山の彼女。

そして、俺のこの世で1番に大切な人。


あいつは絶対に俺が見ていることに気がついている。

さっきからそわそわしている。
俺に話しかけたいんだろうな。
だとしても、俺は意地悪だから自分から行かねーよ?

それにしても、大山はなんで舞香に気がつかなかったんだろう?
馬鹿なのか?
大好きな彼女様がすぐ近くにいても気づかずに、会いたいなんて。

馬鹿じゃねーの。
それじゃ永遠に俺には勝てねーよ。

俺は、別に舞香のコトが好きではない。
甘えたり、手を繋いだり、毎晩メールしたり、そういうことは全くもってしたくない。

ただ、ずっと一緒にいたい。
ずっと側にいて、守ってやって、たまには守ってもらって、助けあいながら死ぬまで一緒にいたい。

前者と後者は全く違う。

気持ちの持ちようが。

舞香もそのことを分かっているはずだ。



舞香が、寝た。
電車の中で。

畜生。隣のリーマン密着してんじゃねーか。
触んじゃねーよ。
その寝顔に変な気起こすんじゃねーよ。

あいつを傷つける奴は、ぶっ潰す。