「おい紫乃!ちょ、「葵もほら、送ってく」

引き留めようとする晨の声を遮って、俺は葵の腕を掴む


「えー!?ここまで来てダメなのかよー…。ぶー…今度は絶対だからな」


珍しく引き下がった洸弥に驚きつつも、俺はすぐにこの場を去る








晨が俺がいなくなるまでずっと見ていたことなんて気付かなかった















「―――じゃ、じゃあ俺はメシでも行こうかな…………なんて」

二人が先に帰った後残された洸弥は思わず苦笑い

目の前の見るからにブルーなオーラを纏った晨に気を使うことしか出来ない


が、初対面で尚且つ紫乃の弟がいるこの空気を乗りきるのは普段ヘラヘラしてる洸弥でも辛いものだった



「そうですか…何かすみません…変な所見せてしまって」

シュンと項垂れた晨の姿に紫乃との関係が気になってしまう


………兄弟、しかも双子って言ったらやっぱり仲が良いものだと思ってたけど、仲はあんまり良くないみたいだったよな

紫乃のあんな表情初めて見たし





「えっと…俺ももう帰りますね…それじゃ」

軽くお辞儀をした晨を見送る



人通りが多い中さっきまでのことをもう一度思い出す


「俺……………紫乃のこと何も知らないじゃん。何か切ねぇ…………」



洸弥の声は誰にも届くことはなかった