大切なやつを守れなかった俺は
すべてを失った
「おーい!紫乃ーっ!おきてー」
…………またか。
一瞬目が覚めるがあいつは放っとけと思い再び目を閉じる。
だが、そういう訳にも行かず
「しっのー!ほーら起きてよぅ!俺寂しいじゃん」
さっきからしつこいなコイツ…
「うるせぇな…洸弥」
「あ!紫乃!起きた?起きたね!」
なんなんだよコイツは
「…おきてない。俺寝てる………」
「えっちょっと待ってよ紫乃!マジ寝ないで!」
「…おい藤咲!いい加減起きやがれ」
「はーい…おきて…ます」
アイツに言われたら仕方ない…
「紫乃寝すぎじゃね?昨夜何してた?
あ、もしかして、「うるさい、うざい、洸弥」
ひどーいと隣から聞こえる
が、それを無視し再び目を閉じようとする
うん寝てないよ。ただ目を瞑っているだけ
「ったく藤咲は…。まぁいい」
おいおいいいのかよーなんてクラスのヤツが笑ってる気がする…
まぁ笑われても俺は気にしないけど
「そー言えば先生!今日転校生いるんですよねー」
「おう!情報早ぇなぁまったく」
いや俺は知らなかった…
教室が賑やかになる
男か女かが特に気になるらしい
「ほら静かにしろー。そんなうるさかったら入ってこれねぇだろーが。」
しーーーーん
ってどんだけ楽しみなんだよ
そして担任の入ってこいという声と同時に扉が開いた
「え、えっと…桜木茉由です。これからよろしくお願いします。」
自己紹介が終わるとすぐにクラスがざわつきはじめる
「紫乃!見てみなよ!めっっっちゃ美人」
隣の洸弥が興奮したように言う
別に興味はないけど顔をあげてその美人さんに焦点を合わせる
…うん美人だね
それしか思うことはないけど
ただ暇だからぼーっと眺めていると視線を感じたのか桜木もこちらを見る
すると顔を赤くし俯いた
はっ?なんだコイツ俺は何もしてないぞ
「そんじゃあ桜木は藤咲の隣な」
担任がそういった途端、クラスのやつらが一斉に俺を見る
「藤咲くんの隣とか桜木さんうらやましー!」
きゃあきゃあと女子の高い声がうるさい
周りの音を消すかのように俺は再び顔を伏せる
「ふっ…藤咲くん…あの、これからよろしくね」
「…………よろしく」
流石に初対面のヤツにシカトをするのも良くないと思い返事をした
「よーしホームルームは終わりだ。授業頑張れよーってあ、藤咲昼休み俺のところな」
……………。
「紫乃、また呼ばれてやんのー。今度は何したんだよ」
なんかしたっけ俺
全然記憶がない…
少し考えてると眠くなってきたから今度こそ俺は寝てしまった
「……ぃ………ぉぃ…おい!藤咲!!」
ガツンと俺の頭に痛みが走る
「…った………あ、茂木先生」
目の前にいたのは般若のような顔をした数学教師の茂木隆行せんせー
おぉ顔が真っ赤だ
てかもう4限なのか。寝すぎたかも…
「いい加減にしろよな。俺の授業で寝るのはお前ぐらいだ」
「すみません」
とりあえず後が面倒だから謝っとこう
「お前はなぁ…。しかもなんだ転校生に教科書を見せるくらいの優しさもないのか」
あ、そういえば俺の隣はあの転校生だったな
「悪いな。俺寝てて。これ使っていいから」
そう言って俺は数学の教科書を桜木に渡す
「え、でもそうしたら藤咲くんが…」
困惑した顔で桜木は俺を見つめてくる
「いや、俺は気にしないでいいから使って」
机くっつけるとか面倒だし
桜木の机に教科書を置きながら言う
「あっ…ありがとう!」
さぁ俺の仕事終わったから寝よ…
「そうはさせないぞ。ほら藤咲ここを解いてみろ」
んだよダルいな……なんて言ったらヤバイから何も言わない
「えー、じゃぁ8で」
「…ふざけんなよオイ。解答欄見てみろ。明らかに分数になるだろここは」
「そしたらパスしまーす」
「仕方ねぇな……じゃぁ神谷ここ解け」
少し離れたところから“うぇぇ!?”って声が聞こえた
ごめんよ神谷くん。誰だか知らないけど
しかし神谷くんが答える前に授業終了のチャイムが鳴った