「しっかりしてく……うわぁ!」


 後から入ってきた少年の言葉は途中で途切れ、物が崩れる音と同時に軽い悲鳴が聞こえた。ふと振り返りその様子を確かめると手をついた机が崩れ、同時に自身も崩れた少年の姿だった。


「大丈夫か、仁」


 笑いながら、仁と呼んだ少年に手を伸ばす。それを悔しそうな顔で掴み、なんとか瓦礫から這い上がろうとしたが、一向に引っ張ってくれない。


「優、どうした?」


 いつの間にか優の笑う声も消え、呆気に取られたように口を開けながら一箇所を見続けていた。そしてその位置を指で指す。


「そ、それ……」

「え?」


 指された位置を仁も確認すると、そこは左手の二の腕だった。そしてそこには白くにごった液体の入った一本の注射器が刺さっていた。

 初め、声にならないどころか状況を把握するのに数秒を要した。なぜなら痛みはまったく感じなかったからだ。そして次第に理解し、


「う、うわああ! ちょっと、取ってよ!!」


――叫んだ