「これのどこが近道なんだよ……」


 ため息交じりの言葉で、一人の少年が言った。歳は十三、四と若干幼さがまだ残る中、少年の通う公立中学のカッターシャツは埃のせいで薄汚れてしまっている。時折手を顔の前で扇ぐ仕草をするが、充満している埃に対しては大した効果があまりなく、むしろ埃が舞い上がってしまっている。


「寝坊したお前が言うな、それに近道を訊いたのはそっちだろ」


 その数歩前を先導するようにもう一人の少年が歩いていた。後ろを歩く少年と同じぐらいの年頃の少年は、舞い上がる埃などまったく気にしない素振りで左右に一定感覚で並ぶ部屋をチェックしていく。

 住宅街に位置するこの辺りでは、一軒一軒が横に連なっておりあまり抜け道がない。寝坊したおかげで、本来通るはずの通学路では二人共遅刻は確実だった。


「そうなんだけどさー……」

「お、ここだ」


 向けようのない愚痴を零した矢先、先導する少年は何かを見つけたように一つの部屋の扉を開ける。そのまま中に入ってく少年を追いかけるように、後ろの少年も入っていった。


「あー間違った、隣か」


 二人の入った室内はところどころが焼け焦げており、穴の開いた天井からは光が差し込んでいた。けれども、その一室には二人が入ってきた以外の扉も窓もなかった。

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