《晴夏》



今日は日曜日。



天気も良いし、特に予定も入ってないからお気に入りのブックカフェに来た。



ここは、休日でも静かに過ごせて嫌なことを忘れるのには最適の場所。



そこで、美味しいミルクティを頼んで星座の本を読んでいた。



「篠崎さん……?」



うっそ……。



「市川くん……。なんでここに?」



そこには、このカフェの制服を着た市川くんがトレー片手に立っていた。



「なんでって……ここ、俺んちの店なんですよ。高校生になったから、店の手伝いしていいって……。」



なんで、よりによって……。



「ふぅ、お友達?」



市川くんを"ふぅ"と呼び、彼の後ろから顔を出したのは、この店を1人で切り盛りする、亜実(Ami)さん。



「あれ? はるちゃん! ふぅと友達だったの?」

「……えぇ、まあ。」



私があまりにもよく来るから、亜実さんとは仲良くしてもらっていた。



「母ちゃん、篠崎さん困ってるでしょ。ごめんなさい、篠崎さん。」



少し眉を下げて微笑む姿はナミそっくり。



市川くんは、ナミじゃないのに……。



あ、だめだ……涙が出てきた。



「母ちゃん、パン焼きっぱだったんじゃないの?」

「あ! 忘れてた! ありがと、ふぅ。」



亜実さんは、厨房に駆け込んでいった。



「大丈夫ですか、篠崎さん。」



私の向かいのイスに腰掛けた市川くんが話かけてきた。



「……っごめんなさい。」

「母ちゃん、当分戻ってこないから。」



そう言って、私の背中をさすってくれた。



市川くんのあったかい手に誘われて涙がボロボロと流れた。



私が泣き止むまで、市川くんは優しく背中をさすってくれた。