《歩実》



今日は高校の入学式。



満開の桜と、雲一つない青空が綺麗だ。



だけど、変なところがひとつ。



俺が通う高校の制服を着た女の子が、俺の上に馬乗りになってる。



しかも、

『……ナミ? ナミ?! ナミなの?!』

とか言って飛び付いてきた。



……えーっと、なんで俺はこんなことになってるのかな??



俺は市川 歩実(Ichikawa Fumi)。



いや、自己紹介なんてしてる場合ではないんですけどね……うん。



ナミってだれだ??



とにかく、俺じゃないことだけは確か。



「……あ、あのぉ、そろそろどいてくれませんか?? 俺、学校行きたいんですよね。」



俺の上にいる彼女をよく見ると、タイピンの色が黄色だ。



ってことは2年生?!



俺は1年だから、青。



いや、今はそんなことはどうだっていい。



「……ナミ、じゃない。そ、か……そう、だ……よね。」



そう呟いた彼女は大きな目に涙を溜め始めた。



「え、え? えぇ?! ちょ、大丈夫ですか?!」



彼女はコクコクと首を縦に振るが、涙は止まる様子もなく彼女の目から流れ落ちた。



泣いている彼女を見て、失礼だとは思ったけど……綺麗だと思った。



そして彼女はついに俺の上で号泣し始めた。