「返してやってもいーよ。いうこときくなら」




「……! うん、わかった、なに。返してっ」





ソレが帰ってくるなら私は多分なんだってしてしまうと思う。


あれ? てかもともと私のものだったような。








「質問~。この紙は一体何?」






にっこり微笑んでそうたずねられても……








「あ、の、ね、ソレに答えられるなら、私、こんなに必死にとりかえそうとしませんから!!」




更科くんは意外そうだ。



「なんでよ? 口で説明するほうが、直接読まれるよりいいでしょ?」




「やだよっ」





「男?」






「へ?」






更科くんがゆっくりと顔を近づける。


ふわ、って爽やかな薫りがした。






「男からの告白?」




「……」





「あ、そうなんだ」





「わ、たし、なにも言ってない」






「ははは。
リッコの顔って正直だね、ってよく言われない?」






更科くんは笑顔のままその紙を広げた。






「……あっ!!!」






「へー。B組の山口がねえ」



「う、う、うそつきっ! 読まないって言ったくせに」



「リッコ。中学からの付き合いの俺に、隠し事するなんて、ひどいよ」






更科くんの口許の笑みが、なぜか怖く見える……。















次の日。





「あ、あの」




「あ……」





「こないだ、下駄箱に手紙入れたものですけど、やっぱあれ、取り消しで! スミマセンでした! サヨナラ!!!!」




呼び止められたと思ったら、速攻で何故かフラレてしまった。(人生初の告白で戸惑ってたから、助かったけど)






「あ、ふられちゃったの?
ソレはソレは、すごーく残念。
きっと縁がなかったんだね、ドンマイ」




更科くんにはそう声をかけられた。







ばか。




更科くんのばか、とこころのなかで思う。








更科くんは気づいてない。



だから、私の心を乱すんだ。






私の心はずーーーっと…………




間近で見た黒い輝きを湛えた瞳にとらわれているのに。