恐怖のあまり、その後私が委員の仕事どころか、二人の会話に口を出せることはなかった。(もともとか)
というか、
「こんなかんじかな! どう思う、楓!」
「うん、いいんじゃない? どう思う、リッコ」
「………は、い、よ、いと思いますモチロン………」
「ぶは。なにこの人、カッチンコチンなんですけど」
更科くんには見えてないんだろーな。
更科くんがわたしにはなしかけるたび、天使のように甘い顔の篠原さんが恐ろしい般若的なモノに豹変するところなんて……。
委員はギリギリ学校に残ってもいい7時までつづく。部活にも入っていなかった私は、はじめて下校時刻のアナウンスやはやくかえれーーって主張するテンポのはやいクラシックを聴いた。
「お疲れ様でしたー」
先輩たちに、挨拶。
「何あれ、くりくりしてる」
「かっわええ。人形かなんかか」
男の先輩たちがはやくも委員に不純な動機を発見してる。
うーん、さすが、天使……。
熱っぽい視線をものともせず、篠原さんがくるりと回って更科くんに笑顔を向けた。
「じゃ、一緒にかえろ、楓!」
「あ、じゃ、リッコも」
ご機嫌に話しかけた篠原さんの顔が再び、げえーーーっと何か出したそうな感じになっちゃってる。
「っあ、わたし、教室に忘れ物したんだ!
ふたり、さきにかえってて」
苦肉の策がこれだ。わざとらしすぎるかな。
あ、でも、すこし篠原さんが嬉しそうになったからヨシ。
更科くんはまゆをひそめる。
「は? いや、待ってるし」
なにいってんだこいつ状態。
「ちがうの! ほんと、見つからないやつだから、はやくかえって!」
「どういうことだよ?」
あーー、ヤバいヤバい、弁解すればするほどに頭大丈夫か状態……!!!!!
「ほんと、見せられないやつなの!!」
返事も聞かずに走って逃げる。
教室にきてみても、もちろん忘れ物なんてうそ。
手持ちぶさたでとりあえず、机に座ってため息。
うーん。
1日振り替えると、
確実にライバル認定されてるような(泣)
そんなにわかりやすいかな?(いままで人にばれたことはないはずなんだけど)
そりゃあなた、どー見てもあなたの不戦勝だしっ!!
そんなに可愛いうえに、歴史も長くて……。
だからそんなに、敵意むき出しにされると、だんだんへこみます……。