昼休みの教室のかどっこ。



「リッコ? なにしてんの? そんなへんなとこで。ウケる」



友達の苦笑が耳に入らないほどの頭痛と目眩が私を襲っていた。


壁にからだを向けて、しゃがみこむ。




だれにも見えない角度で、私は例のメモ書きのような薄い紙(体調不良の元凶)を広げる。





……


……



やっぱりみまちがいじゃないみたい。






今、人生最大の危機が私を襲っていた。



どうしよう。


どうしよう。どうしよう。どうし……







「リッコ」



「ひいっ!!!」




「……どうしたの、そんな過剰反応して。」




突然耳元でささやかれた声に驚いて、振り向く。




「なんだあ、更科くんかあ……」





手の中の紙をポケットにいれて、私はほっと息をついた。




「なんだあ、ってなんだよ。
ていうか、さっきからこんな教室の隅っこで小さくなって、赤くなったり、青くなったり、
いつにもまして挙動不審だよ」




あきれたように更科くんが眉をひそめる。




私はパッと立ち上がる。





「な、……なんにもないっ。
ってか、いつにもまして、とか、私別に普段から挙動不審じゃないしっ」




「なにしてたの?」



「……なーんにもっ」





更科くんは、真顔を崩してにこりと笑う。



この人に近くで微笑まれると少しだけドキドキしてしまうのは、多分私だけじゃないと思う。