「……瑞希」



私はボソっとつぶやくように言った。


苗字はあえて言わなかった。


相馬なんて苗字の子は沢山いると思うけど、夜中に全力で黒い車から逃げる相馬なんていう女の子はなかなかいないだろう。


相馬、と言って私の身元が知られると、いつ父に伝わるかわからないから、申し訳ないけど言わなかった。




「……あ、あなたは?」


私は男の子に苗字を言わなかったことを言及されないように、話を振った。



「……光(こう)」



男の子は少し間を置いて、私と同じように名前だけを名乗った。