「……大丈夫?」
路地裏の行き止まりのところでその人は立ち止まり、私の手を離して聞いた。
私は顔を上げてその声の主を確認した。
暗くてよく見えないけど、私より30センチくらい高い身長に、少し癖のある髪の毛。
パーカーにジーンズを履いた、私と同い年くらいの青年だった。
「……だ、大丈夫、です」
私は息がまだ整わないまま返事をした。
よかった。
あの家に戻らないで済んだ。
フランス行かないでよくなったんだ。
ほっと安心した途端、急に視界が真っ暗になり、ぐらりと傾いた。
「……!」
男の子が息を呑んだ気配を感じて、私は意識を手放した。