午後八時、少し前。
 指定された創作和食レストランの前で、とーぐんのマネージャー、永原さんを発見。

 淡ピンク色のカラーシャツに、赤いネクタイ、ベージュのスーツ。
 茶革のビジネスバッグを小脇に抱えている。
 普通のサラリーマンに比べるとカジュアルながら、きちんと感がある。カジュアルきちんと。

 半年前まではとーぐんの他に、数組のマネージャーを兼任していた永原さんだけど、今はとーぐん専属のマネージャーさんだ。マネージャー歴三年、歳は確か二十七って言ってたかな。

 私を見つけ、ぱっと営業スマイルを見せた。


「あ、お疲れ様です。お呼びたてしてすみません。群司さん、中で待ってますんで」

 永原さんの案内でレストランに入り、奥の細い廊下を進んで個室に通される。
 VIP感漂う、隠れ部屋のようなところにぐんちゃんがいた。

「失礼しまーす」

 黒光りするテーブルの上に手帳を広げ、何やらカリカリと書き物をしていた手を止めて、ぐんちゃんはぱっと立ち上がった。

 仕事着は黒スーツと決まっているぐんちゃんの、私服は小汚い。
 ユーズドのくたびれた感がある洋服を好んで着る、古着オシャレさんだ。

 くたっとしたシャツに、擦り切れたヴィンテージデニム。
 トレードマークの眼鏡も、仕事用の物からオフ用に変わっているぐんちゃんは、完全にプライベートモードらしい。