昼休み、普段あまり使われてない第2音楽室に呼び出された。

待っていたのは、顔は見たことがあるけど名前が出てこない先輩。

面食いのユリが『超イケメン』て騒いでた3年だ。

日当たりの良い音楽室の窓辺に立つ先輩の長めな髪が、キラキラとやわらかな光帯びて動くたび揺れる。

爽やかを絵に書いたような男の人だ。

あたしは無遠慮にジロジロ相手の顔を見て、そんなことを思った。


「俺、3年の沢村コータっていうんだけど」


ああ、そうそう。

『コータ先輩』だ。たしかバスケ部でスカウトが来てて、大学ももう推薦が決まってるとか。

ぜんぶユリ情報だけど。

あのコはどれだけ貪欲なんだろうか。

コータ先輩はひとつ咳ばらいして、あたしを見た。

綺麗なアーモンド型の瞳に見つめられると、一瞬吸い込まれそうな錯覚を覚える。

なるほど、この人には目力があるんだ。

まとっているオーラからして違う気がする。