「それは…つまらなさそうだったってこと?」


あながち間違いじゃない。

学校なんて退屈だ、でもそういうものなんだから仕方ない。

態度には出していたつもりはないけど、そう感じていた。

さすが、優等生はよく見てる。

あたしは逆に訊いてみた。


「三上くんはいま、楽しいの?」


彼はメガネを押し上げ、切れ長な奥二重の瞳をすっと細めた。


「まあまあかな」


短く答え、さっさと行ってしまう。


「まあまあ、か…」


あたしの気分も、まさしくそんな感じだと思って笑った。


「おはよー美緒! なに笑ってんの?」


ユリが玄関に入ってきて、あたしの横で靴を履き替えながら尋ねてくる。


「何でもないよ」

「えーなになに? 絶対なんかイイことあったんでしょっ」

「何もないってば」


ユリに「吐け~」と首を絞められながら、あたしたちは混み合う玄関を後にして、教室へと向かった。