朝、学校のくつ箱の前で三上くんと出くわした。

低血圧でぼーっとしてるあたしとは違い、優等生は朝からシャキッと爽やかな立ち姿。


「おはよう三上くん」

「おはよう」


三上くんは上靴にはき替えながら、くすっと笑う。


「なに?」

「いや。…ご機嫌だなと思って」

「え? あたしが?」

「ちがった? 鼻歌なんて歌ってたから」


うそ。

あたし、歌ってた?

全然意識していなかった。

しかも三上くんに聴かれていたなんて、恥ずかしい…。

深田恭一がよく鼻歌うたうから、移ったのかも。


「なんだか最近の酒井さん、楽しそうだね」


三上くんに言われて、あたしは首を傾げた。

楽しそう?

自覚はないけど。


「まあ…楽しくなくはない、かな」

「へぇ。前はあんまり楽しそうな顔、してなかったよね」


優等生の言葉には、引っかかるものがあった。