大学生で、二十歳で、『サンタクロース』とかいうダサい名前のバンドのボーカルをしてる。

これが深田恭一についてあたしが知った情報。これで全部。

これ以上は深田恭一は教えてくれない。


「美緒ちゃん自身に思い出してもらわなきゃ、意味ないんだ」


しつこく聞くと、困った顔をしながらそう言ってた。

こんなに不真面目そうな風体なのに、ミステリアスな男だなんて腹が立つ。


「大学生ってヒマなの?」

「ははは。俺ってヒマに見えるんだ?」

「だって、もっと大学生って飲んだり遊んだりしてるでしょ?」

「飲んでるし遊んでるさあ。バンドもしてるしね。これでも忙しい男なのヨ」


だったら何で、あたしのアシなんかやってるんだ。

不思議でしょうがない。

気になって、気になって…しょうがない。


「美緒ちゃんハイ。はんぶんこ」


深田恭一は中身が半分減ったコーヒーを手渡してきた。


間接キス?


缶を見て、そんなバカなことを考えてしまうなんて。

あたしは相当やられていた。