深田恭一は「よし」ってうなずいて、ケータイを返してきた。


「これ、俺の番号とメアドね」

「…なに勝手なことしてんの」

「まあまあ。いつでもかけてくれてオッケーだから。美緒ちゃんに呼ばれたら、夜中でも、台風がきてても、事故ってでも飛んでくからさ」

「別に呼ばないし」


いまあの話を聞ければ、別にこれ以上この男と会う必要もない。

そう思って正直に言うと、相手はガクリと大きく肩を落とした。


「そんなァ。せめてバイトあるかないかくらい教えてよ。教えてくんないと、毎日学校の前で張っちゃうかんね」


なんて暇人なんだろう。

そうまでしてあたしに会う理由が、この男にはあるんだろうか?

あるとしたら、どんな理由?

想像がつかない。

だからうさんくさく感じてしまう。

だからイライラしてしまう。

それなのに、コイツを嫌だとは思わない。

自分の気持ちが理解不能だ。


「あのさァ、そろそろ話してほしいんだけど。アンタって一体なんな…」


やっと本題を切り出したところで、あたしのケータイが鳴った。