家から少し離れたところであたしはおろされた。
はじめて乗った原チャは気持ちよくて、ちょっと興奮した。
「よかったら、これから毎回送らせてよ」
あたしからメットを外した深田恭一は、さらりとそんなことを言ってきた。
不覚にも、ドキッとしちゃったじゃないか。
「…何でそんなにあたしに構うの」
「決まってるでしょ。美緒ちゃんは俺にとって大切なコだからさ」
思わず胡散臭そうな目でヘラヘラ顔を見上げてしまう。
そんなクサすぎるセリフ、いまどきドラマでだって聞かない。
「美緒ちゃんのケータイ貸して?」
「は? ケータイ?」
鞄から出ていたストラップをつまんで、深田恭一はあたしのケータイを引っ張り出した。
そして勝手にカチカチ操作して、返してくる。
ゴツいリングがはまった長い指。
つい目が引き寄せられてしまい、ケータイを取り返すのが遅れてしまった。