深田恭一はヘラっと笑いながら頭をさする。
「危ないから、美緒ちゃんはコレかぶってね」
そう言って、あたしにはメットをかぶせてくる。
自分はゴーグルだけかけて、自称『足長お兄さんは』原チャをゆっくりと発進させた。
のんびり走る原チャの後ろ、あたしは嫌々男の腰をつかみながら、細いくせに意外と背中が広いなとか、どうでもいいことを考えた。
肩甲骨に浮かぶトライバルタトゥー。
それが音符とハートがミックスされたような形になっていると気付いたのは、店を出てしばらくしから。
なぜか強く吸い寄せられる。
珍しい形だからか。
体に絵を入れる人の趣味はあたしには理解できないけれど、コイツのこのタトゥーはちょっとカッコイイと思う。
オリジナルなのか、訊いてみよ。
それから深田恭一は運転中、ほとんどあの軽い口を開かなかった。