けれどヘラ男にはまるで効果がなかった。
「ちょっとォ。そりゃないんじゃないの美緒ちゃ~ん」
深田恭一が肩を落としながら笑う。
イラっとくるからヘラヘラするな。
あたしは先生に何度か頭を下げて、ヘラヘラ男を学校の前から引きずり離した。
何とか怪しまれずにすみ、先生は校舎へと戻っていった。
それを確認してからため息をつく。
下校する生徒たちにしっかり見られていたことが、大きくあたしを落ち込ませた。
ユリの耳に入ろうものなら、確実に質問ぜめに合う。
「いやあ、助かったよ美緒ちゃん」
「どういうこと?」
あたしは電柱に深田恭一を押しつけて詰め寄る。
「あんた何者なの!?」
「えー。もう忘れちゃったの? 深田恭一だって…」
「ふざけないでよ!」
あたしは手帳を取り出して、はさめていたあの古い紙を突きつけた。