「だからァ、ちがいますって! 俺はぜんぜんあやしいモンじゃなく…」


走って校門まで行くと、予想どおり奴は先生に詰問されていた。

大きな身ぶり手ぶりで潔白を訴えている。

その姿はほんとバカっぽい。


「…先生、それはあたしの兄です」


仕方なく声をかけると、生徒指導の初老の先生は振り返り、あたしを見てヒョイと眉を上げる。


「あ、美緒ちゃ~ん!」


深田恭一は先生の肩ごしにこっちを見て、ヘラっと頬をゆるめた。

ヘラヘラしている場合か、バカ。


「なんだ、本当に酒井のお兄さんだったのか」

「そうっすよ~。だからそう言ってたじゃないですかァ」


…こいつ、すでに先生にウソついてたな。

図太い奴。


「すみません。来ないように言ってるんですけど、見てのとおり頭の足りない兄で」


心底申しわけない、という感じで言ってやる。

もちろん深田恭一に対する嫌味のつもりで。