十年以上大切にしてきて、いままで気づかなかったなんて奇跡。

…ってゆーかマヌケだ。ヒカルのことは言えない。

テディベアの背中には、よく見ると縫い目があった。

毛を避けて小さく、でもあんまり上手くない縫い目。


「マジで…?」


驚いたなんてもんじゃない。

変な汗が出てきた。

あたしは迷った末に、化粧ポーチから小さいハサミを取り出して、ぬいぐるみを傷つけないように糸を切った。

開いた背中に、おそるおそる手を入れる。

真綿の奥に乾いた感触があって…

指で挟んで引っ張り出すと、それは小さな紙だった。

どういうこと?


『美緒ちゃんへ。

       恭一より』


古い紙切れには、たぶん子どものものだろう字で、そうはっきりと書かれていた。

鳥肌が立った。

恐怖とかじゃない。

ただ、偶然とは思えない目の前の事実に、衝撃を受けた。




その夜あたしは、眠れなかった。




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