そんなに力は込めてなかったはずだけど、予期していなかったからだろう。

綺麗に左頬にビンタを食らった深田恭一は、フラリとよろけて頬を押さえた。


「い………痛いよ美緒ちゃあん! 何でビンタ!?」

「ご、ごめん、つい……じゃなくて! アンタが顔近づけてくんのが悪いんでしょ! このストーカー!」

「だからそれ惜しいんだけどね? 違うじゃんね?」

「何が!?」

「何がって…」


深田恭一は弱ったように眉を下げた。

あたしは逆に眉を釣り上げる。


「あたしの家族はアンタのことなんか知らなかったよ。何であんな意味わかんない嘘つくワケ?」

「えーっ!? マジで!?」


深田恭一はたれ目を見開き、信じられないと頭を抱えた。

なんてオーバーリアクション。


「そっかあ…そうきたか~。そのパターンねぇ…」


アスファルトにしゃがみ込み、金に光る髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる男は明らかに不審者。