刹那、耳を劈くような爆音と共に、東側の窓ガラス3枚が一気に粉砕した。
幸いカーテンで覆われていたため、ガラスの破片が散らばる事は無かったが、明らかにこの≪空船≫に何者かが攻撃をくわえたに違いない。

「風神」と名乗っていた男はすぐさまに立ち上がり、仲間を大声で呼ぶ。
細い廊下を超えた大広間のパーティー会場からは大勢の悲鳴が聞こえるが、今離れると目の前に転がったツキビト族という大物を逃がしてしまいそうで、現場には向かえずに居た。

「シュベロさん‼︎」

ドタドタ、と荒々しく音をたて入ってくるむさ苦しい男達。
「風神」と名乗っていた男は、シュベロ、と呼ばれた。
シュベロは静かに混乱を抑えるように、何があったのか問いかける。

「あのっ、一人のガキが突然入ってきやして」

口々に説明する様はなんとも聞き取りにくいものなのだが、全員が共通して言ったのは、"1人の少年"。
そいつが攻撃をくわえた、敵だと理解したシュベロは仲間たちに黙れと言った。

ツキビト族のカンナヅキを捕らえておくよう三人の男に指示をし、現場に向かおうと部屋のドアを引いたとき。

目の前に、あの宙に浮いてシュベロを見下ろしていた男の子が居た。
その男の子は見下ろしていた時の冷めた目とはうってかわって、大きな目を輝かせ、口元は楽しそうに緩んでいる。

「あなたが、ここのボスだよね?」