〜隼人said〜
俺は、代々続くでかい病院の息子として生まれてきた。
お金持ちだから、別に生活に不満も不便もなかった。
けど、楽しくもなかった。
でも、そんな俺にも幸せだと思う時間はあったんだ。
それは、俺の母さんといる時。
いつも笑顔で、優しくて、俺の事分かってくれて…
親父が帰り遅くてさみしい夜も、母さんがいるからどうってことなかった。
でも、いつからだろう。
母さんの体は知らないうちに壊れていたんだ。
病気になってたんだよ。
癌だった。
気づいた時には手遅れでしたってやつ。
母さんの担当の医者は親父だった
なのに、なにもしなかった
『治らないから仕方がない』
これしか言わなかった
そして、母さんは…死んだんだ
親父は葬式に来なかった。
緊急患者がいたとかなんとかで。
それから俺は親父を憎むようになった
母さんが死んでも涙の一つも流さない親父をな
母さんを亡くしたのは俺が小4の時だった。
まだ子供だったから、親父を憎んでもどうしようもできなかった
そして、俺が中学に入った時、親父は再婚したんだ。
同じ病院で働いてる女医と
その時から、親父と俺は話さなくなった
毎晩遅くに義母さんと2人で帰ってくる
本当に許せなかった
1人でさみしい思いをして逝った母さんを知らんぷりしてたくせに
2人で仲良く帰宅かよ
本当に親父を嫌いになった
でも、義母さんは悪くないから、必要最低限の事は話す
それだけだった
あの大きな家に1人で夜遅くまで親父の帰りを待ってた母さん
考えただけでしんどくなる
だから、俺は親父が嫌いだ