なんの話だろう?

 そう思ったところで、あたしは思い出した。


 マミコちゃんに、呼び捨てで呼んでって言われてたことを。


 マミコちゃんはあたしのことを呼び捨てで呼んでたのに。

 今の今まで、すっかり忘れてた。




「ご、ごめん」


「それだけじゃない!さっくーには自分の意見いうくせに、うちにはいつも何処か引き気味っていうか!大事なことは話してくれないじゃんか!いじめのことだって、知らなかった……」



 マミコちゃんはそう言いながら、下を向いた。



「うちがっ、最初に仲良くなったのに…なんて、ワガママってことは分かってるけど……でも、美喜のこと、大好きだからっ。だから、なんか、美喜が遠く感じた……」


 マミコちゃんの涙が一つ落ちて、輝く砂に、丸い跡が出来た。


 マミコちゃんはまた顔を上げた。


 そして、

「ねえ、うちらって親友?……いや、そもそも友達なの?」

 と、悲しそうに言う。


 その声が、その言葉の意味が、あたしの心を突き刺した。




「おーい!そこの女子2人ー!なにしてんのーー?」

 なんて、男子たちの声が遠くから聴こえる。


 そんなことを気にせず、あたし達は2人とも俯いた。

 視界が涙でぼやけていく。


 あたし、マミコちゃんを知らない間にいっぱい傷つけていたんだ……。


 思ったことを一つも言えない、内気な、この性格のせいで。


 自分が言ったことで相手がどう思うかとか、傷つけてしまわないかとか、そんなの気にせずに言えばいいのに。

 もしも傷つけてしまったのなら、言った後に謝ればいいのに。


 自分の気持ちを言わないことで、傷つく人がいたこと、どうして気付けなかったんだろう。




「………ごめん。頭、冷やしてくるね」


 マミコちゃんはそう言うと、荷物が置いてあるところに走って行ってしまった。