森永君がそう言ったことで、優喜は焦ったように、走って逃げて行った。

 みんなも、後を追っていく。




 ただ、あたしとマミコちゃんだけが、その場で立っていた。

 なんでマミコちゃんは向こうに行かないのか、あたしは気になってマミコちゃんを見る。


 マミコちゃんは少し恐い顔をして、あたしを見つめていた。

 最近様子がおかしいマミコちゃんを見ているから、不安になってくる。


「……ど、どうしたの?」


 思い切ってそう聞くと、マミコちゃんは少しあたしから目を逸らした後、再びあたしを見ると、ゆっくりと口を開く。



「それは美喜のほうだよ。いきなり立ち止まってさ。なにかあったんでしょ?」


 中学が一緒だったわけじゃない。

 会ったのは、今年の、ほんのちょっと前。

 仲良くなったのも、ほんのちょっと前だったはず。


 マミコちゃんと出会う前の時間の方が長かったはずなのに。

 マミコちゃんといる時間なんて、少しのはずなのに。


 まるで、ずっとずっと一緒にいるみたいだ。

 もう、何年も一緒にいたような気がしてくる。


 何故かマミコちゃんは、あたしのことを分かってくれている。



「……マミコちゃんって、すごいね」


「へ?」


 つい、あたしはそう口にしていた。


 あたしのことを分かってくれている人がいることが、こんなにも嬉しいことだなんて、知らなかった。