そうか、これ、いじめだ。
優喜自身は嫌がってないし、楽しんでいる〝遊び〟だから、違うだろうけど。
でも、もしも優喜が嫌がっていたら?
もしも、これが水鉄砲じゃなかったら?
「いじめ……」
あたしはそっとそう呟いた。
そう、分からないものだ。
〝遊び〟と〝いじめ〟の境界線ってのは。
あたしが受けていたものは、確実に悪意があった。
でも、もしかしたら初めは軽いからかいだったのかもしれない。
ただ、面白いから。
ただ、楽しいから。
それだけの簡単な感情から、始まるものかもしれない。
明らかに優喜が不利な状況で、あたし達は優喜に水をかけている。
これも、何処か一つでも違ったら、いじめになるんだ。
そうか、あたしはいじめを受けていたから、する方の気持ちなんて分からなかった。
分かりたくもなかった。
だけど、もしかしたらこういう軽いものが酷くなって起こるものなのかもしれない。
そう思ったら、何故かあの時いじめをしていた人を可哀相に思えてきた。
あたしをいじめた人全てが頭が狂っていたわけじゃないと思う。
あの中にも、したくないって思っていた人がいたかもしれない。
あの中にも、やり過ぎじゃないかと思っていた人がいたかもしれない。