「うおっ、待てって!それはずるい!!」



 優喜がそう叫びながら、海とビーチの間を逃げるように走る。

 その背中に水が沢山かかっていく。

 あたし達は笑いながら水鉄砲を優喜に向けて追いかける。


 そう、これは新しい遊び。

 その名も、<優喜に水鉄砲で水をかけていじめよう>だ。






 さっき、高田くんが水鉄砲を渡してくれたんだけど、1つだけ足りなかった。

 その時、優喜は何故か1人で砂遊びをしていたから、じゃあみんなで優喜に水をかけようとなったのだ。


 砂のお城作りに熱中している優喜に気付かれずに、あたし達は水鉄砲の中に水を入れると、背後からこっそりと近づいて、一気に水を発射した。




 ……こうして、今に至る。


 優喜は水鉄砲を持っていないため、やり返すことが出来ずに、ただただ逃げ回る。

 あたし達はそれが面白くて、追いかけまわす。



「ちょい、それはいじめだぁぁぁ!!」


 そう叫びながら、何処か楽しそうに優喜が逃げていく。


 ふと、その言葉にフリーズした。

 それと比例して、あたしは立ち止まった。


 あたしを置いて、みんなが走って行く。

 優喜を見ているからか、誰もあたしが止まったことに気付いていない。