『瀬奈ちゃん、有山くんのこと教えてもらってもいいですか?』
「教えることなんかないけどなー。けどリコちゃんの頼みだからね。教えるよ」
私達はお昼休みに屋上のコンクリートに座りお弁当を食べていた。
ここでなら有山くんの話もできますしね。
「まず、貴史は変人。」
『・・・変人?』
私は自分で作った玉子焼を口に含み、瀬名ちゃんの言葉を聞く。
「そうそう、変人!貴史は一人称曖昧だし。それでいて変態。下ネタとか言葉のセクハラとかね」
『そうなんですか。』
「どう?アイツなんてこんなもん。少しは分かったかな?」
『あ、はい!ありがとうございます。』
「はぁ、僕はそんな簡単に説明が終わるほどの男じゃないよ。まったく、僕の事が知りたいなら僕に聞けばいいのに。」
聞き覚えのある声がした。
私と瀬奈ちゃんが頭上を見るとそこにはたった今噂していた有山くんの整った顔があった。
「・・・本当、なんでアンタって毎回急に現れるのよ!!」
『わ、本当だ。びっくりしました...。』
「僕も仲間に入れてくれるかな?」
「はぁ!?嫌よ!」
有山くんは瀬奈ちゃんの声を聞くか否や瀬奈ちゃんの叫びを無視して私の隣に座る。
い、いつから聞いていたのだろう。
屋上の扉が開いた音なんか聞こえなかったのに...。
「てか、いつからいたの?」
「ん?お前が『まず、貴史は変人』と偉そうに言ったところあたりだが?」
「ほぼ盗み聞きしてるじゃない!」
『でもなんか最近貴史くんが変人に見えてきましたよ?急に現れますし...。』
「えー。酷いなぁ...ま、でも久世さんにならいいかな。ね、久世さん。」
『え、え?』
「口説かないの!でも珍しいね。貴史が口説いてるのなんか初めてみたよ。」
『そうなんですか?』
変人で変態の方と聞いたら女ずきなのかと。
「あはは。当たり前だろ。そこまで信用されてないと傷つくなぁ...。これでも委員長なんだよ?ま、これも全部このぺちゃパイのせいなんだろうけど。」
・・・まぁ確かに有山くんは委員長で誰からも慕われていますけど。
普通変態の人って慕われるのでしょうか?
いまいちリンクしなかった。
「ま、この学校とか変態多いからね。」
『え、そうなんですか?』
「はぁ、瀬名は勘違いしてるよ。なんで下ネタとかセクハラが変態なんだ?こんなの思春期男子にとっちゃ当たり前のことじゃないか。」
「うぅ。男子にとっては当たり前なのかもしれないけど、女子には理解できないの!」
『・・・私にはそういうの、いまいち分からないんです。男子とあまり話したことがないので。』
__原因は私にあった。
向こうから話しかけてくれても引っ込み思案の私はすぐに会話を終わらせてしまう。
「まぁそれはそれでいいかもね。リコちゃんには純粋でいてほしいし!」
「それは僕も同感だな。久世さんには真っ白な純粋でいてほしい。・・・そしていつか僕の手で汚した...」
「通報するぞ。」
「すみませんでした」
『・・・汚いのはイヤですよ?』
私をけがしたいだなんて。
有山くんはそんな人だったんでしょうか?
「あはは。そういうけがしたいじゃないよ。ま、今は知らなくてもいいかな。」
瀬奈ちゃんと有山くんが言ってることがたまに理解できないけど。
いつも瀬名ちゃんとお昼を食べていたから1人増えただけでもとても賑やかで楽しかった。
『有山くん。』
「ん?なんだい?」
『また、一緒にお昼食べましょうね。瀬奈ちゃんも、いいですか?』
「!も、もちろんだよ!久世さんが望むのならいつだって!」
有山くんの承諾も得ましたし、
瀬奈ちゃんも「り、リコちゃんが言うなら。」って承諾してくれました。
なんだかんだ言って、瀬奈ちゃんも今日のお昼が楽しかったんですね。
私は幸せに包まれながら、また玉子焼を口に含んだ。