「くーせーちゃんっ!」



『...えっ。高倉くん?』



「送ってくよ。」



『え、いや、部活はどうしたんですか?』



「えへへ、遅刻のしすぎだー!って、先輩に怒られちゃってさ...。」



『遅刻はだめですよ。てか、なおさら帰ってしまっていいんですか?』



「いいのいいのー!駅まで一緒に帰ろ。」



私に満面の笑みを浮かべ手を引く高倉くん。
あぁ・・・もう室外の部活の人達に見られてます...。

変な噂が立ちそうでこわい。
高倉くんだからなおさら。



「どうしたの、久世ちゃん?」



高倉くんが私の顔を覗き込んでくる。



『いえ、あの・・・高倉くん、その・・・手が。』


「え?あ、うん。あれ、もしかして久世ちゃん照れてるのー?」


『て、照れてません!!』


「かわいー。」



高倉くんは私の手を離してくれる様子はなく、面白そうにからかってくる。
本当になんなんだこの人は。




「あれ、貴史じゃん。」


『!』



高倉くんが指さす先には有山くん。
有山くんもこちらに気付いたらしく、私たちを見た瞬間目が大きく見開いた。

それは私と高倉くんが一緒にいるからなのか、その間で繋がれた手を見てなのか...。




「りゅーうーきー。」



「やぁ貴史。僕をそんなに睨んでどうしたんだよ。」



「どうしたじゃないだろ。なんだその手は」



「え、なにって久世ちゃんと手繋いでるんだけど?」



そう言って高倉くんは有山くんに見せつけるように君により手を強く握った。

た、高倉くん..さっきよりも有山くんの視線が鋭くなってます!



『ゆ、有山くん...。』



「やぁ、久世さん。可哀想に、龍輝の悪遊びに付き合わされちゃってこっちにおいで。」



両手を広げで有山くんが私を待っている。
まるで飛び込んでこいとでも言っているかのように。

...少々鼻息が荒い気もしますが。



「悪遊びってなんだよ!」


「その通りだろ。いつも女子に手出して。久世さんは今進路のことで忙しい時期なんだ。ちょっかい出すなよ。ついでに俺にもな。」


「俺だって忙しい時期だよ!部活だってもうすぐ引退だし--」



それでも、と高倉くんが続ける。
私の方を見て微笑み、あろうことか私の手の甲にキスをした。



『!?』


「忙しくても久世ちゃんのことが大好きだからちょっかい出しちゃうんだよねー!」



ごめんね、と言いながらもウインクした高倉くんには一切反省は見られない。
そんな様子の高倉くんを見て有山くんは深いため息をついた。



「はぁ、もう付き合ってられないな。」


「あれ、どこ行くんだ貴史。」


「僕はもう帰るよ。龍輝、あまり久世さんに迷惑かけるなよ。」



そう言って有山くんは私たちと反対側へ帰ってしまった。



「なんだ、つまらないな。」



『高倉くん、からかうのはやめてください。』


「からかってないよ。それにしても、貴史のヤツはほんとに面白いな。余裕があるように見せてるけど動揺してんの丸見え。」