___当たり前にすぎていく季節。今は4月。



私達はあと1年で卒業なんだと思い知らされる、進路のプリント。


私の手にあるプリントは機械で印刷された無機質な文字が並んでいたが、私にとっては白紙だとしか思えなかった。




「久世さん、進路のプリント提出日明日だけど大丈夫?」



夕日がさすこの教室には日直の私しか残っていなかった。だが、いつの間にか学級委員長の有山 貴史 (ユウヤマ タカシ)がいた。




『有山くん・・・?』



「あぁ、ごめん。驚かせたかな?忘れ物をとりにきたんだ。」




彼は申し訳なさそうにメガネをあげる。




『そうなんですか。こちらこそ、気付かなくてすみませんでした。』



「ううん、大丈夫だよ。それよりそれは進路調査票だよね?提出してないの、久世さんだけだよ?もしかして、まだ決まってなかった?」




そう私、久世 リコは卒業まであと1年であるにもかかわらずまだ進路が決まってないのだ。


しかも進学か就職かも決めておらず、自分が何をしたいかさえも分かっていない。




『・・・はい、そうなんです。』



私は悩んでいる事をありのまま有山くんに話した。

情けなくて自然と顔が俯く。



「大丈夫だよ。君は成績が優秀だからね、きっといいところに進学できるし、就職だってできるさ。」



『・・そうでしょうか?』



私は自分なんかにこれっぽっちも自信なんかなかった。

けど何故だろう。


有山くんの言うことはとても説得力があった。



もしかしたら有山くんのおかげで進路が見い出せるかもと思うほど。




「ところで、ホントに君は可愛いね。あのぺちゃパイとは大違いだよ。いつか一緒に子供でもつくろうか。」




・・・やっぱり今のは嘘で。



この変態はどうしてたまにこのような事を言うのだろうか。


だが、私はそのような所も含めて有山くんを気に入ってしまっていたのだ。



・・・いや、それよりも深い。



___私は彼に夢中になってしまっていた。