『記憶喪失?私、何にも忘れてないよ?』

と叶がへらっと笑う。

『有栖、本当に覚えて…無いんだね?』

『えっ…?私、何を忘れたの?』

『俺の記憶だよ。』

気がつけば俺はそう呟いていた。

『有海くん…の記憶?』

『ああ、俺と過ごした記憶。』

『有海くんと過ごした記憶…。』

叶は一生懸命思い出そうとしていた。

でも…、

『ごめん…、思い出せないや。』

そう弱々しく呟いた。

『でもまぁ、ゆっくりでいいんじゃないかな?』

『そうだよ、無理に思い出そうとしたら体に悪いし。』

『それもそうだな。』

『俺、帰る。』

そう言って俺は病室を出た。