数十分後…。

『んっ…。』

有栖の長い睫毛が揺れた。

俺はナースコールを押し、葉月と高梨と結崎と翔吾に電話した。

えっと1番最初が看護師で、次に葉月、高梨、結崎が来て最後に翔吾が来た。

まさに連絡した順番だ。

俺は一回病室を出た。

はっきり言えば、叶に拒絶されるのが怖かった。

俺は翔吾が呼びに来てやっと病室に入った。

叶は葉月、高梨、結崎と仲良さげに笑いあっていたが、やがて…、

『翔吾くん、その人って有海くん?』

と、他人ヅラで聞いて来た。

『はぁ?馬鹿ゆうなよ、お前ら付き合ってんだろ?』

と翔吾が言った。

すると叶は、

『えっ…?今あったのが初めてですよね?』

と言ってふにゃっと笑った。

『いや叶、違う。

今あったのが初めてじゃねぇ。』

『えっ?』

叶は目を見開いてこちらを見つめる。

『もしかしたら…、一時的な記憶喪失かもしれません。』

そう、看護師が呟いた。

その呟きに心臓が止まるかと思った。