私は走った。

授業の始まりのチャイムすら聞こえないほど。

ただひたすら走った。

しばらく走って私は屋上に出た。

そしてフェンスの近くに見覚えのある背中を見つけた。

私は声をかけようとした…、でも有海くんは電話で話しているようだった。

でも、決して厳しい表情じゃなく、幸せそうに笑ってた。

しばらくして、電話が終わったらしくいきなりこちらの方に振り向いた。

『んだよ。』

『えっ…と、さっきはごめんなさい。』

『別にいーよ。』

有海くんは私を怪訝な表情で見ている。

『怒ってる?』

『別に…、つか別れよう。』

その言葉は突然ポロっと彼の口から出た。

私はそのとき実感した。

ああ、彼にとって私はそんなものか…、と。

『何でいきなりそんなこと言うの?』

『はぁ!?お前が別れたい的なことゆーからこっちから言ってやったのに、あとお前に礼を言う。

ありがとう。

お前のおかげで目ぇ覚めたわ、よく考えたら俺にはお前より麻美の方が合ってるからな、また麻美とやり直すことにしたから。』

『そっ…か。』

私は泣きそうになったから、唇を噛んで俯いた。

『じゃあな、もう二度とお前には近づかねぇよ。』

バタンッ…。

少し乱暴に扉を閉めたようで音が響いていた。