バァンッ!!
『有栖っ!!』
『大樹…。』
俺は愛しの人の元へと急いだ。
そしてそっと、有栖を抱き寄せた。
『無事で良かった。』
どうやら、見るだけなら怪我はなさそうだ。
俺は本気で良かったと思った。
すると、有栖のか細い声が聞こえた。
『大樹…、痛い。』
痛い?
『えっ…?』
『腕…。』
腕だと?まさか…、麻美のやつ見えないところをやったのか?
『腕?』
俺は有栖の腕を優しく掴み、袖をまくった。
すると、紫色っぽくなった傷が何個かできていた。
『麻美…、いい加減にしろ。』
『いやっ…、私じゃない!!』
ムカつく…、俺の有栖を傷つけやがって…。
許さねぇ。
『ふざけるなっ!他に誰がいる!!』
俺は麻美を怒鳴り散らした。
『大樹、落ち着い…。』
有栖は必死に止めようとしてくる。
『有栖は黙ってろ。』
気がつけば俺はそう呟いた。
有栖は一瞬、辛そうな表情をしたがやがて…、
『分かった。』
と言った。
だかすぐに有栖は俯いた。
そして有栖は部屋の入り口に目を向けた。
俺は翔吾に…、
『翔吾、有栖と飛鳥を連れて戻れ。』
と告げた。
すると、
『分かった。』
と帰ってきた。
俺は有栖の身体を離すと麻美と向き合った。
麻美は有栖を鋭く睨んだ。
翔吾は有栖の肩をだいて部屋を出た。
俺は有栖が扉の向こうへと消えるまで無言で麻美を睨み続けた。