堂々と付き合うことを
許されないこの現実が、

今も俺たちを何度も傷つける。

きっとこれからも…


それを覚悟の上で
一緒に居ることを選んだし、

頭では分かってるんだ。


だけど、

こうやって自分の心の限界が
たまにやってくる。


言いたいことも、
やりたいことも、

普通の恋人なら出来ることが



俺たちには出来ない。



「…陸…、あたしを嫌いにならないで」

「…なる訳ない。俺の片想い歴何年だったと思ってんの」

「へへ、」


雫が笑いながら
ぎゅっ、と陸の服を掴んだ。


この時のあたし達は

今を生きるため
好きな人と居るため

毎日が精一杯だった。


だから、何も気づかなかった。


「お父さん、もうあの子たちも20歳ね」

「そうだな…」



平和だったこの毎日の裏で


少しずつ、

歯車が狂い始めていることを…