『ピピーッ』
部活が始まった。
『パァーンッ』
ゾクッとするほど良いピストルの鳴る音。
『ダダダッ』
部員の走る音。
『ファイトー!!!!』
部員の掛け声。
陸上に関する音すべてが聞こえる。
「空羅? 走らないの?」
亜美が目を閉じて突っ立っている俺に声をかける。
「んぇ? あ。走る。」
俺もあわててスターティングブロックをセットする。
足をつき、前を見据え、息をふく。
―集中、する。
『パァーンッ』
その瞬間、俺の足は地面を蹴って、走り出す。
風を切り、
全力で。
―音は、なにも聞こえない。
ゴールした、瞬間。
すべての音が耳に入ってくる。
「おお!! 空羅、調子いいんじゃね!?」
陸哉くんが、俺のタイムを見て声をかけてくれる。
俺もストップウォッチを見る。
―6″0-
「でも、まだまだっすよ」
第一、陸哉くんは5秒台が普通なんだから。