「楓ちゃん…私の話聞いてくれるかな?」

そう言うと裕ちゃんのお父さんは話始めた。
私は黙って聞くことにした。
裕ちゃんのお父さんは、裕ちゃんの子供の頃の話やここ最近のことなど色んなことを話してくれた。その話を聞いてると、私は苦しくなった…。

ごめんなさい…。
ごめんなさい…。

裕ちゃんを奪ってしまって…裕ちゃんのお父さんの前で泣くまいと我慢していたはずの涙が溢れ出す。

「楓ちゃん泣かないで…?
裕也は最後にあった人が楓ちゃんで嬉しかったはずだから…楓ちゃんが裕也の死に責任を感じることはないんだよ。」
「で、でも……裕ちゃんを引き留めとなければ…っ……あの日裕ちゃんが亡くならなくてよかったんだ…」
「楓ちゃん、それでもいつしか人は死ぬんだよ。」

放たれた一言が現実を突きつける。そう人はいつか死ぬんだ。生きてる限り死は、いつだって隣り合わせだっとんだ。
そんなことも私はどこか他人事のように今まで思ってたんだ。
裕ちゃんのお父さんの辛そうに言ったその言葉に私は耐えられなくなった。辛いのは自分じゃない。もっと辛い思いをした人がいるんだ…。
自分は裕ちゃんのお父さんの傷みに比べたら…、

「裕也は親不孝者だよ…。
私より先に逝くなんて…親孝行だってまだだったのに…」

裕ちゃんのお父さんの本音が溢れた。
裕ちゃんはお父さんと二人暮らしだったから…。

「でもな、楓ちゃん…
人がいつ死ぬかなんて誰にもわからないんだよ…。
私だって裕也が17歳で死ぬなんて思ってなかったよ…もっとアイツに親父って呼ばれ続けると思ってたよ…。」

返す言葉が見つからず、私はうつむいた。
だからと言って、私の責任には違いない…

「……それでも私がいなければ、裕ちゃんは死ななくてよかったはずです。」

意を決して裕ちゃんのお父さんに伝える。
うつむいたままの私には裕ちゃんのお父さんの表情は見えない。
私の視界に映るは、手首に巻かれた白い包帯。あの日のことを思い出す…。
私は生きてちゃダメなんだ…。

「楓ちゃんは責任を感じる必要はないんだよ…。
裕也のために楓ちゃんが命を投げ出すことなんてもっとないんだ。」