詩月はフッと溜め息をついただけで、振り返らない。



妹尾は拳を握りしめクッと小さく漏らし、詩月の後ろ姿を睨みつける。




「貴方はローレライだわ!!」




眉を吊り上げ、怒りにわなわなと体を震わせ、ありったけの声を張り上げる。




「ロー……レライ!?」




詩月は立ち止まり、聞き返す。




「貴方はローレライよ」



はっきりと、更に声を張り上げる。




ハッとし、妹尾を見つめ「何故?」と呟いた詩月の言葉は、声にならなかった。




胸に手を押しあて、血の気が失せ、詩月の息遣いが乱れる。





「詩月!!」




声にならない呻き声。

シャツの上から胸に押しあてた手が、ぎゅっと握りしめられる。




理久が血相を変え、駆け寄る。




詩月の体が脱落するように崩れ、理久の差し出した腕に沈んだ。