「察している通りだと思うけど。

彼は今、彼女の弾いている演奏で大幅に変更された曲を記憶しようとしていて、

頭の中に楽譜を譜面ごとリアルタイムでインプットし記憶している。

パソコンの画面のように。

そして……記憶した楽譜と初見の楽譜を確かめ擦り合わせながら、ソロ演奏をすることになる」




「そんなこと……あの……!? 大丈夫なんですか?」


「どうだろう!?

今回はかなり難易度が高そうだけど……

今までも彼は、クリアしてきているから」




「……そんな、信じられない!?」




理久の漏らした言葉を拾い男性が、平然と言う。




「凡人が天才の力量を測ってるのさ。

今のところは彼の全勝」




理久は呆れて言葉が浮かばない。



こいつら……楽しんでる


味方なんて1人もいない


こんな、状況で半年以上も詩月はヴァイオリンを弾いてきたのか!?


音楽は心

それだけを信じて





理久は怒りと苛立ちと悔しさが込み上げ、体が火照っていくのを感じた。