詩月は、郁子とは2年も同じクラスだったのに殆ど何も知らないなと思う。



安坂と仲の良い郁子は、詩月の幼なじみで隣家の岩舘理久とも親しい。




いつだったか、理久は安坂と郁子には恋愛感情などないと言った。




詩月は、そんな筈はないと思う。




安坂が郁子に向ける表情や何気ない気遣いは、安坂が郁子に幼なじみ以上の好意を持っていることを感じさせる。



郁子もまた、そんな安坂を自然に受け入れているように見える。



実際、女子が噂しているのを詩月は幾度か聞いたことがある。



放課後、安坂と郁子が練習室を予約し、練習を装いイチャツイテいる……などという下衆な勘繰りだ。



詩月はくだらないと思うし、当人たちは全く気にしていない。




詩月が郁子に、噂されてるのを知らないのかと尋ねた時、

郁子は「言わせたい人には言わせておけばいい」


と笑い飛ばし、詩月が呆れたほどだ。